コンピュータプログラムで自動的に売買してくれるロボアドバイザーサービスが流行っています。
実際にロボアドバイザーサービスを使っているという人も出てきて、資産運用をするならば、ロボアドバイザーサービスを使えば大丈夫だと思っている人が多いようです。
でも、本当にロボアドバイザーサービスで資産を増やすことができるのでしょうか?
ロボアドバイザーって何?
ロボアドバイザーとは、年齢や資産運用の経験、元本保全性をどう考えるかなどの質問を答えることで、最適な資産配分を提示し。
あとは、リスクが一定の範囲内に収まるように自動で売買及び資産配分の変更等を行ってくれるサービスです。
ほとんどのケースで、ETFという株式市場に上場している投資信託を使って運用しています。
その理由は、ETFはインデックスファンドであることが多く、低コストで運用できるという利点があるためです。
資産運用をするにあたって、低コストというのは非常に重要なポイントになります。
また、投資信託はアクティブと言われる、俗にいうプロが投資判断を下し運用するスタイルの投資信託よりも、インデックスと同じ動きをするように作られた投資信託(インデックスファンド)の方が成績がいいことが多いという理由もあります。
ロボアドバイザーサービスは本当に有効か?
ロボアドバイザーという言葉の前に、ロボアドバイザーサービスが行おうとしている投資戦略について知っておく必要があると思います。
ポイントとなる言葉は。
・パッシブ運用
・分散投資
・アセットアロケーション
です。
ほとんどのロボアドバイザーサービスはこの投資戦略を使って運用しています。
パッシブ運用
パッシブとは平均といった意味になります。つまり市場全体を丸ごと買うことで、勝ちもなければ負けもない、平均点を狙う運用法です。具体的には日経平均やTOPIXといった市場平均の指数と同じ動きをするように作られたインデックスファンドを使うことが多いです。
このパッシブ運用の利点は、市場に負けることがないということです。また比較的低コストの運用に徹することもできるため、コスト削減ができた分リターンを減らさない効果もあります。
「敗者のゲーム」という投資本の名著とされている本では、株式投資をアマチュアのテニスゲームにたとえ、「勝とうとして試合をするよりも、負けないように試合をすることが大切。」と説明しています。
実際、アクティブ運用の投資信託の大半は、長期で見るとインデックスファンドに負けていることが多く、そのことからもインデックスファンドの有用性が確認できます。
分散投資
分散投資はリスクをコントロールするための投資戦略です。
自分がよくわからない所へ投資をするときには、まず分散投資という投資戦略でリスクをコントロールします。
しかし、分散投資は決して資産の最大化を狙った投資方法ではないということも理解しておいた方がいいと思います。
分散投資の目的は、リスクコントロール、つまり「資産を守る」という発想からきています。
そして、「資産を守る」=「資産の形成」ではありません。どちらかというと「資産を守る」ことと、「資産を形成」することは相反するところがあります。
ウォーレン・バフェット曰く、「分散投資は資産を守り、集中投資は資産を築く」です。
資産形成のためには、集中投資という選択肢をとった方が効率的である可能性が高いということです。
アセットアロケーション
株式や債券、不動産(REIT)、コモディティ(金や原油など)はそれぞれに違った値動きをする性質があります。
例えば、株価、REITが上昇ているときは債券とコモディティが下落し、逆にコモディティが上昇しているときは、株価は下落しているといった感じです。
また、株価は年間に20%ぐらいの値幅で変動するが、債券は年間10%程度の変動になるといった値幅の違いもあります。
そのような、各資産の値動きの癖を利用した資産配分で投資することで、よりリスクを減らし、リターンの効率を上げようというのが、アセットアロケーション戦略です。
さらに、相場によっては各資産の変動率が変化したりするため、例えば、前期の株価の変動幅は15%ぐらいだったが、今期は25%ぐらい変動しているといったことです。そういった変化に合わせ、資産の配分を機動的に変更するという戦略をとります。
ロボアドバイザーでは、この資産配分の変更と、それに合わせた売買を自動的に行ってくれることになります。
ロボアドバイザーの問題点は?
まず、分散投資は資産形成を目的としている場合には、向いていません。
これは、ロボアドバイザーサービスを使っても、普通のバランス型と言われる複数の資産へ分散して投資する投資信託でも同じことです。
つまり、収益目的であれば、ロボアドバイザーサービスを使うよりもいい方法はあるということです。
そして、パッシブ運用ですが、確かに投資信託で考えればアクティブ運用よりもインデックス運用の方が成績は上になることがほとんどです。
しかし、その裏には、投資信託は運用資金が大きいため、アクティブで運用しようとしても、資産の増加とともにインデックスに寄ってきてしまうことになっていること。
また、自分の資産を自分で運用しているわけではないので、投資の意思決定が簡単ではないところがあること。
株式投資信託であれば、待機資金として現金で保有したりすることはなくフルインベストメント(全資金を株式に投資する)で運用されていることが多いこと。
そして、アクティブ運用はインデックス運用よりも手数料コストが高いことなどが、インデックス運用に後れを取ってしまう原因になっていると思われます。
最後にアセットアロケーションは必要か?ですが。
確かに、市場が通常運転の状態であれば、ロボアドバイザーのアセットアロケーションは、うまく機能していくだろうなと考えられます。
しかし、市場には稀といっても結構頻繁に起きていますが、嵐が吹き荒れることがあります。一番記憶に残っているのは「リーマンショック」という言葉ではないかと思います。
この「リーマンショック」の時は、全ての市場で値下がりを起こしています。
つまり、このときは分散投資の効果がなかったとまでは言いませんが、効果は薄くなっていました。
つまり、予期せぬ嵐が吹き荒れた時は、たとえロボアドバイザーと言えど、うまく乗りこなせるかにまだ疑問が残っていると考えています。
ロボアドバイザーというと、最近はやりのAI(人工知能)を想像しがちですが、それとはちょっと違うのかなと思っています。
AI(人工知能)というと、ディープラーニングなどの機能で、過去の情報や経験を取り入れながら、人が考えるように、未来を想像したり判断したり、予測したりといったことを人よりずっと高度に行っているイメージが強いです。
ですが、世間でいうロボアドバイザーは過去のデータや統計から、設定されたプログラムに従って売買しているだけのような感じをうけます。
つまり、人工知能というよりも、システムトレードといった方が近いのではないかと思っています。
そして、システムトレードでは、そのシステムを誰がどういうルールで作ったがが重要になります。
言い換えれば、システムトレードの運用成績はシステムを作った人次第ということです。
ある意味、アクティブファンドとやっていることは対して変わらないのかもしれません。
ロボアドバイザーサービスを使えば、資産は増えるのか?
結論から言えば、ロボアドバイザーサービスは資産を増やすという目的で取り組むものではないのかもしれないと考えています。
あくまで、預貯金や国債の一歩先の資産運用サービスといったイメージでしょうか?
ロボアドバイザーが行っている投資戦略は、収益の最大化を目指した戦略ではなく、リスクとリターンの最適化だということです。
さらに思うことは、ロボアドバイザーサービスに手数料を1%以上払うよりも、信託報酬手数料が1%以下のバランスファンドを選んだほうのが効率的かもしれません。
おそらく、値動きに違いがあるにしても、ロボアドバイザーサービスもバランスファンドも長期的に見れば運用成績にそれほど差はないのではないかと思います。
むしろ、信託報酬手数料が安い投資信託ならば、コストを削減できる分、成績が上をいく可能性もあるのかもしれません。
内容はともかく、「あなたに合わせた運用」という言葉が魅力的に感じるってことなのではないでしょうか?
ちなみに、私個人が考える資産を増やすための投資戦略は。
ロボアドバイザーサービスとは投資戦略自体が違うもので、「集中投資」と「バリュー投資」の組み合わせの方がいいのではないかと思っています。
集中投資は、たとえば株式投資を選ぶなら、株式投資を資産の主軸(大部分)におく資産配分で、銘柄も20ぐらいに絞った感じかなと思っています。
また、負けない運用を目指すために、バリュー投資の考え方で、銘柄選択と売買のタイミングを考えると良いのではないかと思います。
銘柄選択でいえば、PBRが低いものとか、タイミングでいれば、市場が暴落した時に買うとかです。
投資資金もフルインベストメントになるのではなく、暴落時に買い向かえるように一部は現預金などキャッシュで保有し、市場で暴落が起こるのを待っているというスタイルがいいのではないかと考えています。
もし、そういう投資戦略を実践するロボアドバイザーが現れたとなれば、投資先として検討するかもしれません。
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