キャピタル 驚異の資産運用会社

この本の著者はチャールズ・D・エリスです。投資の古典ともいえる『敗者のゲーム』の著者としても有名です。

『敗者のゲーム』と言えば、効率的市場仮説に基づいたパッシブ運用というイメージですが、この本に登場する資産運用会社キャピタルは、アクティブ運用の会社です。

『敗者のゲーム』では、株式市場などの効率的な市場では、相手を出し抜いて勝つという勝者のゲームではなく、負けないことに徹する敗者のゲームになっていると言っています。

そのため、マーケット(市場平均)に勝つことは無理だという説明でした。つまり、アクティブ運用はパッシブ運用に勝つことはできないという話です。

それが、アクティブ運用であるキャピタルを素晴らしい会社だと、この本で説明していることには、少し矛盾した印象も受けます。

しかし、なぜかその矛盾した感じを受けることなく本を読み進めることができてしまうことに、なんとなく不思議な感じを覚えました。

キャピタルの運用哲学の中に、長期投資があります。1年や2年の成績がどうであろうと、長期的な視点から投資運用を行い、長期的な成績で運用の良し悪しを見るということです。

実際に、10年などの長期間の運用成績を見ると、業界全体の上位4分の1以下に落ちたことはないそうです。

なぜ、そのような成績を維持できるのか不思議なところです。

効率的市場仮説を信じるのであれば、長期間の運用になればなるほど、アクティブ運用はパッシブ運用に勝てないという理屈になるはずです。そのような意味もあって、チャールズ・D・エリスは『敗者のゲーム』でインデックスファンドを押しているわけです。

しかし、『キャピタル 驚異の資産運用会社』では、パッシブ運用ではなく、ファンドマネージャーの力量によるアクティブ運用を肯定する立場にいます。これは、全然違う立場なわけですが。

結局のところ、両者ともに長期投資というところにブレがなかったから、言っていることの違和感を感じることなく読むことができたのかもしれません。

この本の内容は、運用方法やキャピタルがどのような運用を行っているかという話よりも、キャピタルという会社がアクティブ運用の良さを消さないように投資信託の運営をするためにどのように取り組んでいるか、どのような組織づくりをしているのかといった内容になっています。

投資家として参考になるというよりも、資産運用会社として役に立つといったイメージの内容です。

それでも、投資信託がなぜ長期投資に弱くなってしまうのか、なぜアクティブ運用の投資信託が上手くいかなくなってしまうのかが、見えてきました。

①ファンドマネージャーの力が最大限に発揮できない組織運営

②長期投資ではなく、短期の成績に重きを置いてしまう。

③顧客も長期投資の立場が取れていない。販売する窓口が長期投資を前提として動いていない。

④手数料収入の確保のため、運用成績よりも運用資産規模の拡大が目的なってしまっている。

などが、投資信託の問題点としてあるようです。

このような問題を解決するための組織作り、運営方法がキャピタルにはできているというのを感じました。また、このような組織運営は、簡単にできることではないと思うところもあり、この社風があるかぎり、他社にはまねができない、追いつけないというような存在になってくるのかなとも思いました。

また、このような組織づくりは、資産運用会社だけに限った話ではないのかも感じました。会社としても、このような社風が出来上がっている会社はきっと強いだろうなと、投資家としてはそういう企業の株式を好んで買うようにするといいのだろうなとも思いまいた。

新規採用時に、資産運用業務との相性をみる心理テストを行うという一文がありました。自分でも投資をしているため、資産運用と人の心理の関係は非常に大きいものだと感じています。

確かに、成績優秀とか面談の印象がいいとかもあるかと思いますが、運用という仕事に向いているかどうかとして心理という部分を重視しているというのが、非常に実務的だと思いました。

まぁ、こんなことは、この本の中ではたいした話ではないわけですが、何がすごいのかうまく説明できないところがあるように感じました。

練り物というか、その時の気温や湿度などいろんな条件で、材料の配合を変えたり、コネ具合を変えたりしながら出来上がってきたものという感じがします。

投資をする側として気になった一文があります。

『パッシブ運用がアクティブ運用に大きく勝った直後にパッシブに移る例が多いことだ。「これでは天井近くで資金を投入しているようなものだ。パッシブ運用をやるなら、アクティブマネジャーが市場平均に勝った後で実行すればいい」』

なるほどそういう見方もあるのかと思いました。

ちなみにキャピタルのホームページを見たら、日本の証券会社でもキャピタルが運用する投資信託を販売しているようです。

「キャピタル日本株式ファンド」、「キャピタル世界株式ファンド」がSBI証券と楽天証券で販売されているようです。

成績を見ると、分類平均とほぼ同じといった感じで、特に優秀という感じでもありませんでしたが、ただ思うところは、投資信託が設定されてからやっと10年といった感じなので、長期投資を運用哲学としていることを考えれば、これからが力の見せどころなのかもしれません。

キャピタルの運用方針に、下落相場で損失を抑えることで長期間での成績を上げるということがあるようです。

今後起こるであろう暴落時に、キャピタルの本当の運用力が試されるということなのかもしれません。

田仲幹生

投資会社、FP会社 ㈱あせっとびるだーず 代表取締役

投資、資産運用のスクールを運営。
資産運用、ファイナンシャルプランニングの相談などを行う独立系のファイナンシャルプランナー。

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