投資家のヨットはどこにある? プロにだまされないための知恵

『昔々のものがたり。

おのぼりさんの一行が、ニューヨークのウォール街を見学させてもらっていた。

一行がウォール街にほど近いバッテリーパークやって来ると、ガイドのひとりが停泊中のすばらしいヨットの数々を指して言った。

「ごらんください。あそこに並ぶヨットは、みな銀行家やブローカーのものですよ」

気の利かない田舎者がこう聞いた。

「お客のヨットはどこにあるのかね?」』

という皮肉から始まります。

バフェットが推奨しているというのを見たので読んでみたのですが、とにかく皮肉たっぷりのお話でした。

さっきの例では、銀行家やブローカーは儲けているが、儲かっているお客はいないの?という意味が込められているようです。つまり、投資家と金融業界では、利益相反の関係が成立しているということを延々と説明している感じです。

しかし、ここまで批判的でなくてもいいのではと、個人的には思いましたが。

それと、ジョークや比喩的な表現が多くて、理解が難しかったなという印象です。訳が悪かったのか、著者の言い回しがややこしいのか、アメリカのジョークになれていないのか、とにかくわかりずらかった。

投資家と金融業界の利益相反関係については、日本でも金融庁が気にしていることが話題になっています。

例えば、金融庁のレポートで外貨建ての保険に対して、仕組み的に無駄なところが見受けられ本当にお客のための商品になっているのか疑わしいとか、長期で運用されているような投資信託が他国に比べても少なく、投資信託の販売手数料稼ぎの商品設計と販売姿勢が感じられるなどといったことを言っています。

また、2017年4月7日の金融庁の森長官のセミナーでは、『2707 本ある日本のアクティブ型投信について、設定以来、三分の二以上の期 間において資金流入超となっており、ノーロードで信託報酬が一定率以下であることなどを要件としたところ、これを満たすものは、5本でした。』とか、『積立NISA の対象となりうる投信は、インデックス投信とアクティブ型投信あわせて約50 本と、公募株式投信5406本の1%以下となりました。』などと話したようで、本当に顧客本位で事業を行っているのだろうかという疑問を投げかけています。

そもそも投資信託は、成績がどうであれ、資金さえ集めれば投資信託の運用会社や販売会社は儲かる仕組みになっています。

さらに、顧客に投資信託の入れ替えを勧めれば販売手数料が稼げるようになっていることが多いです。これは投資信託に限らず、現物株式でも保険商品でも同じことです。

ある人が、証券会社から、とある米国株を勧められたという話をしていました。

その米国株は、最近株価が好調で、しかもこれからの時代を感じさせるような事業を行っている会社でした。ただ、会社としての業績はいまいちといった内容でしたが。

人は、ストーリーのあるものに心を動かされやすいという傾向があります。これからの時代をイメージさせるような事業を行っている会社は、証券会社からすれば顧客に勧めるのに非常に説明しやすいものです。それは成績を伴った運用とならなくてもです。

そもそも効率的市場仮説から考えるならば、これからの時代を作っていくような事業だと思われているものであれば、将来のその会社が稼ぎ出すであろう利益も、すでに株価に反映されているはずだということになります。

つまり、ストーリーの魅力で株の銘柄を選ぶという行為には、投資としての価値はほとんどないといえます。もっと言えば、すでに株価が好調という時点で、将来の利益は織り込み済みである可能性は非常に高い感じがします。

以前証券会社に勤めていましたという人の話で。

午前中、お客様に、今こそ豪ドルを買う絶好の機会です。という話をしながら、午後には、違うお客様に、もう豪ドルは魅力がなくなっているので売ってしまいましょうという営業していたと話していた人がいました。

その人は、そういうのが嫌になったので、証券会社を辞めたと言っていましたが、その証券会社は、誰もが知っているような大手の証券会社でした。

『投資家のヨットはどこにある?』は皮肉たっぷりで、そんな業界の裏話を紹介しています。

それは言い過ぎなのではと感じるところもありますが、実際に起こっていることであることは間違いなさそうです。

そもそも、証券のブローカーが本当に値上がりするいい銘柄を選択できるのであれば、人に売るのではなく、自分で投資したほうのが儲かるのでは?という疑問があります。

投資家として、世界でも指折りの資産を築いてきた人はたくさんいますが、ブローカーとして世界屈指の資産を築いた人はどのくらいいのでしょうか?

つまり、本当に投資の世界で稼ぎたいのであれば、ブローカーとして稼ぐよりも投資家として自立したほうが可能性があるのに、ブローカーとして仕事をしている時点で、どうやら本当に儲かる投資先を知っているわけではないのかもしれない、ブローカー本人は、投資で資産を築くことなんてできないと考えているのでは?という疑問が出てくるわけです。

投資でそれなりの成績を上げてきた人たちの話を探しても、ブローカーと付き合って、ブローカーに勧められるままに投資をしてきたという人の話はほとんど聞きません。

ほとんどの投資家が、自分で投資先を探し、自分の判断で売買し運用してきた人たちのように感じます。

また、昔証券会社で証券の販売を行っていたが、いまはもう会社をやめ自分で投資をするようになって資産を築いたというような人もいるようです。

『プロにだまされないための知恵』とまでこの本では言っていますが、ある程度の防御ができるだけの知恵をつけておくことは、こういう業界の実態を聞くと、非常に有益なことだと思えてきます。

バフェットが、どこまでこの本の内容をとらえているのかはわかりませんが、人に投資の相談をする前に、金融業界には、こういう実態があるということを頭に入れてから相談したほうが身のためなのかもしれないです。

田仲幹生

投資会社、FP会社 ㈱あせっとびるだーず 代表取締役

投資、資産運用のスクールを運営。
資産運用、ファイナンシャルプランニングの相談などを行う独立系のファイナンシャルプランナー。

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