複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

「市場は物理法則で動く」を読んで、市場や社会を物理学で考えるという話に興味を持ったので、同じ著者のマーク・ブキャナンが書いたこの本「複雑な世界、単純な法則」を読んでみました。

やっぱり興味深い内容でした。

この本では、スモール・ネットワーク、ティッピング・ポイント、パレートの法則、など私たちの周りのネットワークについて数学的に考えた話が紹介されているわけですが、特に中心となっているのは、スモール・ネットワークについてです。

「市場は物理法則で動く」で、現代ポートフォリオ理論の根底にある正規分布という考え方が、市場には合致していない(実際の市場は、正規分布ではなくべき乗測?)のではないかという疑問を呈していたことに、目から鱗という感じで衝撃を受けたのですが、今回も、このスモール・ネットワークのことを知らないことは勿体ないことかもしれないと感じました。

スモール・ネットワークとは、いわゆる6次の隔たりと呼ばれる現象について、数学的に考えられたネットワークの形のことです。

6次の隔たりとは、6人をつないでいけば世界中のだれとでもつながれるという、ちょっと有名な話です。

直感的に考えると、「そんなはずないでしょ?」と思うことなのですが、実際に手紙を使った実験などを行うと、本当にそういう現象が起こるということで、不思議とされていた話です。

その現象をスモール・ネットワークという考え方で説明できるということです。

ネットワークと聞くと、いろんな人とランダムにつながっているようなもの(ランダム・ネットワーク)を想像してしまいますが、スモール・ネットワークは、関係の深いネットワークがあり、そのネットワークの中から、遠い関係の浅いネットワークにつながっている部分が少しだけ出ているというネットワークの形らしいです。

このスモール・ネットワークによって、6次の隔たり、つまり人のネットワークの他、食物連鎖などの生物の関係性、ニューロンなどの神経のネットワーク、富と貧困などのお金や経済のネットワーク、などが説明できるという話です。

面白い話です。自然界の現象の多くは、スモール・ネットワークという法則に従っているということなのかもしれません。

まさに、「複雑な世界、単純な法則」です。

お金の話をすると。

ネットワークの中で、一部のスモール・ネットワークが大きくなっているという現象があるそうです。例えば、お金持ちの周りには、たくさんの人のつながりがある大きなネットワークができていることが想像できます。

さらに、大きなネットワークは、より大きくなっていくという現象がみられるそうです。

例えば、大企業には、たくさんの取引業者がいて、新卒の就活性もみんな一斉に大企業を目指して動いていきます。中小企業や、起業したての会社も、大企業との関係を持ちたいと考えます。

そうやって、お金持ちや大企業に、人やモノ、お金が集まって、どんどんネットワークが大きくなっていく。

難しく考えなくても、直感的にもなんとなくわかる話です。

一部のネットワークをハブとして、どんどんネットワークが大きくなっていく。そのネットワークが物理的な限界を超えるまでは。

そうやって、自然界のネットワークが形作らているということですから。

お金持ちがよりお金持ちになっていくという自然現象が起こることも、「なるほどな」と思うところです。

つまり、ネットワークが作られる自然現象から、お金持ちがよりお金持ちになる理由がある以上、この宇宙にいる限り決して格差がなくなることはないという話になるわけですね。

そしたら、大きなネットワークさえ作れれば、お金持ちになることもできるのでは?と考えたりしますが。

そんな単純な話でもなさそうです。

自分がネットワークのハブとして自然界に認められなければ、大きなネットワークに育てることができないわけですからね。つまり運ですよね。

相場と一緒です。自分を特別な人間だと思っていたら失敗する。

だってみんながネットワークを作りたいと思っているわけですから、その人たちの中から、自分がハブに選ばれるかどうかは、どれほどの確率なのだろうと思うわけです。

でもお金基準で、ハブの役割を考えると。

入ってくるお金を、いろんなところに使っていく。お金のネットワークのハブとして自分が機能すれば、小さなものだったとしても少しずつお金のネットワークができてくるのかな?

そして、そのネットワークは使うお金の量が増えれば増えるほど、どんどん広がっていく。

その結果、入ってくるお金の量もどんどん増えていく?

「お金は使えば使うほど戻ってくる」という話をよく聞きますが。

お金を基準としたネットワークを考えると、お金を使うことで、お金が出ていくネットワークができてきて、そのネットワークが拡大するにつれて、お金が入ってくるネットワークができてくる。これは自然界の法則なのかもしれません。

そう考えると、投資という行為は、お金のネットワークを作る行為そのものなのかもしれないですね。

というよりも、おそらくそうなのでしょう。

投資家という存在は、労働するわけでもなく、社会にサービスや商品などの付加価値を提供しているわけでもなく、社会にとってどのような役割があって、なぜ収入を得られるのか、世の中でどのように役立っているのか不思議に思うところもありましたが(市場にお金を提供しているとか、企業を支援しているとか色々言われるけど、個人的には、はてなと思うところもあった)、ネットワークの法則のことを知ったことで、なんとなくわかってきた気がしました。

投資家とは、お金のネットワークのハブとして機能するための存在なのだろうなと。

お金を右に左に動かして、お金のネットワークを機能させることで、お金の循環を生み出しているということかもしれません。そうすることで、お金のネットワークが大きくなり、国や世界の経済を大きくする役割を果たしている、そんな存在なのかもしれないと思いました。

そういえば、長く日本の経済成長が止まっていますが、それももしかしたら、ネットワークの法則で説明できるのかもしれないなんて思ったりします。

日本には、投資にも消費にも回っていないお金があふれていると言われています。

つまり、お金のネットワークができていないということかもしれません。お金が回るネットワークができていないから、お金が入ってくることがない。つまり経済成長ができない。

お金を使うこと(お金を回すこと)の重要さを改めて実感する次第です。

「お金は使えば使うほど戻ってくる」なんて話本当かよ?なんて思っていたところもありますが、ネットワークという法則で考えると、嘘ではないんだなと思えてきます。

面白いですね。

自分で資産運用をしていると、思うことがあります。

「自然界の法則に逆らうな」です。

確率や物理学、心理学など、自然界の法則に逆らって、自分は自然界を超越した特別な存在なんだと考えることは、絶対にしてはいけないということです。

市場は、神の世界です、人間一人でどうこうできる世界ではありません。

ましてや、小さなネットワークしか持たない凡人には尚更どうすることもできません。

うまくやっているトレーダーや投資家ほど、「確率や統計」などの重要性を良く理解しているし、身の丈に合わない利益を求めようともしていないと思っています。

たまに、とんでもない利益を上げる投資家もいるかもしれません。でもそれは、市場がべき乗則で動いているのだとしたら当然の話ですが、ごくごく少数に現れる希少種であり、それに入れるかどうかは神のみぞ知るです。

だからこそ、自分のできる範囲がどこまでなのかを知る意味でも「自然界の法則 」を知ることが、とても大切なんだと思っています。

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